追悼

2003年3月25日

20年以上も前、初めて独りで映画を見に行った。
梅田のシネマ2だったかな、ATG映画を中心にやってたところ。

見たのは大森一樹監督「ヒポクラテスたち」
なんでそれを選んだのかまでは記憶に無いけれど
まさに青春って感じの爽やかな作品だった。

近年は娯楽商業映画職人になってしまった大森さんだけど
この頃はまだ自主映画のニオイがぷんぷん漂っていて
ほんとうに良い作品に仕上がっているのだ。

出演者も贅沢で、きたやまおさむ（ていうか自切俳人）に
鈴木清順、森本レオに柄本明、原田芳雄、軒上泊
なんと手塚治虫まで出ている。

私はこの映画に多大な影響を受けた。
まず独りで映画館に行くことがコワくなくなった。
そして邦画（多くはATG作品）を立て続けに見まくった。

白衣の職業に憧れを持つようになったのは
この映画の影響だと思うし
注射が大好きになったのも、伊藤蘭ちゃんが
自分の血を抜いて楽しむシーンを見てからだと思うし
思い出しただけで胸一杯に甘酸っぱい感じがわいてくる
大好きな、大切な映画のひとつなのだ。

古尾谷雅人さんは、だから私にとって、いつまでも
医学生の「荻野愛作」クンだった。
（役名まで覚えているわけは映画を見ればわかる）
お互いに年はとってしまったけれど
青春のシンボルであり、大学時代の代名詞みたいなものだった。

そんな彼が、自ら命を絶ったという。
何があったのか推すすべもないけれど
なんだかとても淋しい。

自殺したのは蘭ちゃんで、古尾谷クンじゃなかったはずだよ...